ダイエット用語

マイオカインは筋肉が出すホルモン

運動の写真

マイオカイン(ミオカイン)とは、筋肉を動かすことで骨格筋から分泌されるホルモンの総称です。マイオカインのつづりはMyokineで、myoが筋、kineが作動物質を意味しています。

 

運動することでマイオカインが分泌されて全身に運ばれ、様々な臓器に働きかけることで多彩な健康効果をもたらすのではないか、との研究が盛んに行われています。近年の研究で健康にいい効果が具体的にいろいろとわかってきました。

 

 

マイオカインの発見

 

筋肉からホルモンが分泌されていることが発見されたのは、筋肉ムキムキの牛がきっかけでした。ベルジャン・ブルーはベルギーで飼育されている伝統的な牛なのですが、驚いてしまうほどムッキムキな姿のマッチョ牛です。

 

こちらがベルジアンブルー(belgian blue)の動画です。すごい筋肉です!

 

ベルジャンブルーは、トレーニングをしているわけではなく、生まれつきの体質でこのように筋肉が大きく発達するのだそうです。

 

その体質というのがミオスタチンというホルモンを作る遺伝子が働いていないこと。ミオスタチンは筋肉が発達するのを抑制するホルモンです。筋肉はエネルギーを消費するので、必要以上に発達してしまうと大切なエネルギーを使いすぎてしまうことになります。そのため、ミオスタチンが一定以上筋肉が発達しすぎないように調整するのです。

 

アメリカのセイジン・リー博士によりミオスタチンは筋肉から分泌されていることが発見されました。

 

この後、骨格筋が放出するホルモンが研究されるようになり、2003年にIL-6(interleukin-6)が筋肉から大量に分泌されることが発見されました。(※IL-6は、免疫細胞が放出する物質としては1986年に発見されていました。)この研究を発表したデンマークのベンテ・ペダーセン博士によりマイオカインという総称が使われるようになりました。

 

マイオカインの研究は2016年には100以上もの論文が発表されるなど、2000年代のホットな話題となっています。日本国内では首都大学東京大学院人間健康科学研究科の藤井宣晴教授らが有名です。

 

 

マイオカインの種類

 

マイオカインはこれまでに50種類以上見つかっています。ほとんどが身体の他の場所からも分泌されるという特徴をもっています。

 

脂肪細胞と骨格筋の両方から分泌されるものをアディポカイン+マイオカインでアディポ・マイオカインと呼ぶそうです。最近注目されている、奇跡の善玉ホルモン、長寿ホルモンといわれるアディポネクチンは、アディポ・マイオカインのひとつです。

 

筋肉を動かすと分泌されるマイオカインですが、分泌量が多いものはIL-6、IL-8、CXCL1、LIF、CSF3、IL-1β、TNFαと言われています。その他次のような種類が知られています。

 

ミオネクチン(CTRP15)、ミオスタチン、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-15、デコリン、BDNF、アディポネクチン、イリシン、IGF-1、FGF-2、FGF-21、FSTL-1、IL-1RA

 

 

マイオカインの作用

 

マイオカインの作用をご紹介します。

  • SPARC

    大腸がんの抑制因子

  • IL-6

    筋肉に糖を取り込む・GLP-1分泌を促進してインスリン分泌促進・脂肪燃焼の促進

  • IL-13

    筋肉に糖を取り込む

  • IL-15

    脂肪燃焼の促進

  • FGF-21

    脂肪燃焼の促進

  • アディポネクチン

    動脈硬化抑制

  • イリシン(Irisin、アイリシン)

    認知機能改善に貢献・COPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防、治療に寄与・白色脂肪細胞(貯蔵)を褐色脂肪細胞(燃焼)に変換

  • IGF-1、Fractalkine(CX3CL1)

    膵臓でのインスリン分泌促進・骨形成促進

 


マイオカインの健康効果

マイオカインの健康効果としてまとめると以下のようになります。

  • 脂肪細胞では脂肪を分解する
  • 肝臓では溜まりすぎた脂肪を取り除くことで血糖代謝を改善
  • 脳では認知機能の改善
  • 骨では骨を強くする作用
  • 血管壁では動脈硬化を予防
  • 免疫力アップに貢献
  • コラーゲンを増やして肌の弾力アップ

 

糖尿病への作用

 

マイオカインのIL-6などがAMPキナーゼを活性化して筋肉への等の取り込みを増やし、脂肪燃焼を促進することがわかっています。また、GLP-1を活性化して糖を代謝する機能を持つインスリンの分泌を増やすこともわかっています。これまで、血糖値を下げる作用を持つのはインスリンだけと考えられていました。そのため、運動によって放出されるマイオカインの血糖値を下げる作用はとても注目されています。

 

ただし、前出の藤井教授によると、糖尿病が進むと運動によってできることが少なくなってしまうとか。糖尿病初期、あるいは糖尿病予備群の方は運動でマイオカインを増やすことがより大きな効果をもたらすそうです。

 

 

癌(がん)への作用

 

癌(がん)と関連の深いマイオカインは、SPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine)です。SPARCは、大腸がんの、がん細胞やがんになる前の病変に直接作用して、細胞の自殺といわれるアポトーシスに導きます。健康な細胞には影響しないそうです。

 

また、SPARCは筋肉での糖代謝を改善することによって大腸がんの予防にも役立ちます。糖代謝が正常になるとインスリン感受性が改善します。このことは糖尿病にもいいのですが、大腸がんは2型糖尿病の人に発症リスクが高いので、高い血糖値を改善することは大腸がんの予防につながることになるわけです。

 

 

認知症への作用

 

認知症に関係のあるマイオカインはイリシンです。イリシンは、脳内の栄養因子として神経細胞の成長促進や神経回路の形成を促すBDNF(脳由来神経細胞因子)を増やします。BDNFは記憶に重要な関わりをもつシナプスでの情報伝達を効率的に行うことにも関与していて、シナプスの以上は記憶障害などにもつながります。

 

また、アルツハイマー病により認知機能が低下している人ではBDNFの減少がみられるそうです。BDNFを増やすイリシンの発見で、運動が脳にいい作用をもたらすメカニズムがわかったのです。

 

イリシンの作用は、認知症だけじゃなく、脳内のBDNF減少が確認されているうつ病や統合失調症への効果も期待されています。

 

 

脂肪肝と高血糖・ホルモンの相関性

 

肝臓には寝ている時などのエネルギー源として糖を蓄える機能があります。

 

肝臓に脂肪が溜まり脂肪肝になると、脂肪が邪魔をして糖分を取り込めなくなり、蓄えきれなかった糖が血液中にあふれるために高血糖になってしまいます。

 

肥満や脂肪肝と診断されていない人の中にも似たような状態の人もいるそうです。糖尿病予備軍の方は脂肪肝の一歩手前と疑ってもいいかもしれません。

 

このような状態になる人はマイオカインが出にくくなっている恐れがあります。マイオカインは、肝臓に溜まった脂肪を分解してとりだしてくれるホルモンです。マイオカインの分泌を促すことで糖代謝がよくなり、脂肪肝の改善にも貢献します。

 

 

肌への作用

 

ファンケルの研究で、マイオカインはコラーゲンが作られるのを促進し、肌の弾力に貢献することがわかりました。関連するマイオカインはC2C12。さらに、ローズマリー油、カミツレ油、ニュウコウジュ油がマイオカインの分泌量を増やすことがわかりました。

 

参考:マイオカインに着目したファンケルのANDMIRAI商品

 

 

マイオカインを増やす方法

筋肉を動かす

 

マイオカインは筋肉を動かすこと(筋収縮)で分泌されます。運動することがマイオカインを増やすためにもっとも必要なことです。運動というと、トレーニングウェアを着て、スポーツシューズをはいて・・・なんて考えますが、かしこまる必要はありません。

 

マイオカインは低強度の運動でも増えることがわかっています。

 

普段している以上の身体活動はすべて運動。ちょっとだけ身体を動かすレベルを上げればいいのです。いつもより少し早歩きしたり、階段を使う。掃除を一生懸命する。ちょっとだけレベルを上げて運動にすればいいんです。

 

参考:運動ギライな人が手軽に活動量を増やす2つの方法

 

さらに、マイオカインをうまく出すコツがあります。

 

筋トレと有酸素運動を組み合わせる

 

筋肉に負荷がかかる筋トレをするとマイオカインの分泌が早く始まります。

 

まず筋トレを行い、その後継続的に動ける有酸素運動にバトンタッチするとマイオカインを効率的に増やせます。

 

 

ゆっくりスクワット+15分ウォーキング

 

運動習慣がない人でも大丈夫。

 

たけしの家庭の医学では、食後に10回ゆっくりスクワットをして、その後15分ウォーキングするのを進めていました。

 

スクワットは曲げる時も伸ばす時も3~4秒かけます。転倒しそうな人は椅子の背などにつかまって行いましょう。曲げた時つま先よりヒザが出ないように注意。椅子に腰掛けるときのようにお尻を落とすようにするとうまくできます。背中が丸まらないように気をつけて。

 

食後に行うのは、食事をすると血糖値が上昇するので、このタイミングで運動するとマイオカインを分泌するだけじゃなく食後の血糖値を下げる効果も期待できるからです。

 

実際に毎食後にスクワット+15分ウォーキングを実践した高橋ジョージさんは、たった1週間で空腹時血糖値が116から104に下がりました。

 

ちなみに高橋ジョージさんのBMI値は20.7。
痩せているのに高血糖で軽度の脂肪肝もありました。

 

 

運動を毎日継続することが重要

 

マイオカインは1回の運動で出す量に限りがあるため、ソフトな運動でも毎日続けるのがポイント。

 

上記のように毎食後の運動はなかなかできない人も、通勤で歩く人は家を出るまえにゆっくりスクワットをするなど自分のライフスタイルの中で継続できる方法を考えましょう。

 

マイオカインは腰から下の筋肉から主に分泌されますが、新しい筋肉からしか分泌がされません。そのため、歩いてもいないし全く運動もしていないという人は筋肉の新陳代謝が行われていないので分泌されにくくなっている恐れがあります。少しずつでも筋肉を動かして、新しい筋肉を獲得し、マイオカインを増やしましょう。

 


マイオカインを増やす食べ物はある?

たんぱく質が摂れるサラダの写真

マイオカインは筋肉から放出されるホルモンです。筋肉量が増えれば分泌量も増えることになります。筋肉を増やすために必要な成分はなんと言ってもたんぱく質です。

 

ダイエット中にカロリー制限するとたんぱく質不足になりがちです。低脂肪のたんぱく質はいろいろありますので、カロリー制限をしている時でもたんぱく質はしっかりと食べるのがおすすめです。1食15~20gを目安に。サラダチキンなら1個分弱、卵なら中2個、ツナ缶1缶、サバ缶1缶など。

 

たんぱく質が多いお肉、魚、大豆や大豆製品(豆腐、納豆など)をバランスよく食べるのが健康的です。

 

 

 

マイオカインについての話題でした。

 

余分な血糖が血液中にあるとインスリンが出てきて脂肪細胞にため込んでしまいます。痩せたいと思っている人にも脂肪分解し血糖値を下げる新ホルモン「マイオカイン」の分泌をよくすることが有効です。

 

この記事は、たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学「身体を老けさせない秘密第5弾 血糖値改善&脂肪を分解マル秘ホルモン分泌SP」で放送された内容をきっけに情報を追加しました。

 

 

マイオカインは血糖値を下げるホルモンです。
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